2020年11月
いつまでも美味しく食事をとるために
11月8日は「いい歯の日」です。“いい歯”があれば、いつまでも美味しく食事をとることができます。いい歯を維持するためには、毎日歯のお手入れをし、口の中を清潔に保つことが大切です。これを機に、もう一度歯の健康について見直してみましょう。
全身の健康に影響を及ぼす歯周病
歯の代表的な病気の一つに歯周病があります。歯周病菌の塊であるプラーク(歯垢)が原因で起こる歯周病は、歯茎など歯を支える歯周組織に炎症を起こし、破壊していく病気です。歯周病が進行すると、膿が出たり、歯がぐらぐらして抜けてしまいます。それだけでなく、全身にさまざまな影響を及ぼすことが最近わかってきました。
例えば、歯周病によって作り出される炎症性物質が血糖をコントロールするインスリンの働きを低下させ、糖尿病を悪化させます。一方、糖尿病があると細菌に対する抵抗力が低下し、感染症である歯周病が起こりやすくなります。血流に乗った歯周病菌が血管に付着すると動脈硬化の進行に関与するという研究報告も出ています。
また、食べ物や唾液が食道ではなく、気管から肺へ間違って入ることを誤嚥(ごえん)といいます。歯周病があると、食べ物や唾液に混じって誤嚥した際に歯周病菌が肺に入り、誤嚥性肺炎を起こすことがあります。全身の健康を守るためにも歯周病を防ぐことが大切です。
歯科で定期的にプロによるチェックを受けよう
歯周病を防ぎ、いい歯を保つには、正しい歯磨きが欠かせません。歯磨きは歯周病予防だけでなく、65歳以上の高齢者に増えている虫歯予防にも有効です。
歯磨きでは、歯ブラシや歯間ブラシを用いて歯の表面のみならず、歯と歯の間もしっかり磨くことが大切です。意外に多いのが、自分ではしっかり磨いているつもりなのに、実際にはきちんと磨けていないケースです。一度、歯科を受診して、注意して磨かなくてはならない箇所や上手な磨き方について指導を受けることをおすすめします。
きちんと磨けていたとしても、プラークはどうしても少しずつたまってきます。少なくとも半年間に1回、定期的に歯科で歯のチェックやクリーニングを受けましょう。
一口30回ゆっくりと噛むことを心がけよう
口の中が不潔だと歯周病菌や虫歯菌などが増え、歯周病や虫歯の原因となるばかりでなく、誤嚥性肺炎や口臭なども引き起こします。口の中を清潔にするには歯磨きのほかに、よく噛んで食べることも有効です。噛むことで分泌される唾液には口の中に溜まった食べ物のカスや細菌を洗い流す自浄作用があります。また、唾液に含まれるリゾチームやラクトフェリンなどの物質には口の中の細菌の増殖を抑制する働きがあります。
食事の際は一口につき30回、ゆっくりと噛むようにしましょう。よく噛めば唾液も十分に出てきます。なお、歯や口の健康についてわからないことがあるときは、薬剤師に気軽におたずねください。
イラストレーション:堺直子
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