2018年11月
味がわからない。それって味覚障害かも!?
「何を食べても味がしない」「実際とは違う味に感じる」―。味覚にそんな異常のある人が増えているといわれます。自覚がないまま症状が悪化することもあるので注意が必要です。
高齢者に多い味覚障害。最近は若い人の間でも増加
舌の上には味覚を感じる味蕾(みらい)という組織があります。味蕾は若い頃は約1万2千個あるといわれますが、60歳を過ぎるとほぼ半分に減ります。そのため、高齢になると味覚に異常を訴える人が多くなります。また、味覚障害は若い世代にも増えているとの指摘があります。その背景として、インスタント食品やファストフードの多食、過激なダイエットなど、栄養の偏った食生活があると考えられています。
味覚障害の症状は人によってさまざまです。何を食べても味が薄いと感じたり、全く味がしない人もいれば、食事をしていないのに苦さやしょっぱさを感じる人もいます。また何を食べてもまずい、口に入れた食べ物が表現しがたいほど嫌な味に感じられるといった例もあります。
食は人生の大きな楽しみです。味覚障害はその楽しみを損ない、生活の質の低下にもつながります。
味覚障害の主な原因は亜鉛不足
味覚障害の原因で多いのが、新陳代謝に不可欠なミネラルである亜鉛の不足です。味蕾は新陳代謝が活発で、多量の亜鉛を必要とします。そのため体内の亜鉛が不足すると、新しい味蕾をつくることができなくなり、味覚の低下をもたらします。
亜鉛不足による味覚障害は、食事からの亜鉛の摂取量が少ない場合はもちろん、消化器の病気により栄養の吸収が低下した場合にも起こることがあります。また、降圧剤や抗生物質などの中には亜鉛の排出を促す性質をもっているものがあり、こうした薬の副作用による薬剤性味覚障害もあります。
亜鉛不足以外では、やけどなどの外傷、腎臓や肝臓などの機能障害、鉄欠乏性貧血なども味覚障害の原因となります。
食事からの亜鉛摂取が基本。不十分なときは薬で補充
味覚障害を改善したり予防するには亜鉛の摂取が欠かせません。カキやホタテなどの貝類、牛肉などの肉類、空豆やえんどう豆などの豆類などに亜鉛は多く含まれます。食事からの摂取だけでは不十分な場合には薬で補充する方法もあります。
味覚障害は、発症から治療開始までの期間が長いほど、味覚が戻るまでに時間がかかるとされます。「味覚がおかしい」と感じたら、早めに医師や薬剤師に相談しましょう。なお、亜鉛不足について相談できる医療機関はサイト「亜鉛で元気」で探すことができます。
イラストレーション:堺直子
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