2018年1月
肺炎球菌ワクチンの予防接種、済ませましたか?
発熱、咳、痰、息苦しさ、胸の痛みなど、一見風邪と思われる症状が実は肺炎によるものだった、ということが特に高齢者で多く見られます。2011年に脳卒中を抜いて日本人の死因の第3位になった肺炎。しっかりと予防対策をとりましょう。
高齢者でははっきりした症状が現れないことも
肺炎は風邪と同じように、呼吸器系がウイルスや細菌に感染し、炎症を起こす病気です。風邪では主に鼻や喉などが感染するのに対し、肺炎では病原体が肺の奥まで入り、気管支の先にある肺胞に炎症が生じます。肺胞は酸素と二酸化炭素を交換する役割を担っているため、肺胞に炎症が起きると熱や痰などの症状に加え、呼吸がしづらくなったり、胸が痛くなったりします。ただし、高齢者の肺炎では、こうした症状がはっきりとは現れず、なんとなく調子が悪い、食欲がないなどといった状態が続き、気づきにくいことがあります。放置して治療が遅れると、時には生命に関わることもあります。特に、風邪やインフルエンザの後にこのような症状が見られたら、肺炎を疑い医療機関を受診しましょう。
高齢者、糖尿病の人、肺や心臓、肝臓、腎臓に持病がある人、ステロイド薬や抗がん剤、免疫抑制剤などを使っている人などは免疫力が低下しているため、肺炎にかかりやすいので特に気をつけましょう。
うがいや手洗いとともに、口腔ケアも忘れずに
肺炎を予防するには、外から帰ったらうがいと手洗いをする、外出時にはマスクを着用する、睡眠を十分にとる、疲れをためないといったことを心がけましょう。喫煙は肺炎のリスク要因の一つです。タバコを吸っている人はぜひ禁煙しましょう。
通常、食べ物や唾液は口から食道に入りますが、飲み込む力が弱っていると気管に入ってしまうことがあります(誤嚥《ごえん》)。その際、食べ物や唾液とともに口の中の細菌なども気管支に入ってしまうと、誤嚥性肺炎の危険が高まります。したがって誤嚥を防ぐことが誤嚥性肺炎の予防につながります。ゆっくりと食事をする、歯磨きなどで口の中を清潔に保つといったことを心がけましょう。
定期接種の対象者は3月31日までに済ませて
肺炎を引き起こす病原体は細菌やウイルスなどさまざまですが、特に高齢者の肺炎の原因として多いのが肺炎球菌です。肺炎球菌に対してはワクチン接種が勧められます。平成29年度(平成29年4月1日~30年3月31日)に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる方で、これまでに肺炎球菌ワクチンを接種したことがない方は自治体が実施する定期接種の対象となり、費用の助成を受けられます。この機会を逃さないようにしましょう。また、接種した際、医療機関より接種日を記載したカードやシールを受け取った場合は、お薬手帳に貼るなどして保管しておきましょう。
ご自身が肺炎球菌ワクチンの定期接種の対象かどうかなど、肺炎についてわからないことは薬剤師に気軽におたずねください。
イラストレーション:堺直子
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