2019年11月
かくれ脱水に要注意。冬場も水分補給を忘れずに
脱水症は「暑い季節に起こるもの」というイメージが強いですが、実は夏以外にも、非常に起こりやすい時期があります。それは冬。特に、この時期は知らず知らずのうちに体から水分が奪われて水分不足気味になってしまう“かくれ脱水”の危険が増すので注意しましょう。
乾燥した空気が体内の水分を奪う
汗以外に、呼気や皮膚から失われる水分を不感蒸泄(ふかんじょうせつ)といいます。季節や体温などによって多少変動がありますが、一般的に成人では、体重1kg当たり約15mlの不感蒸泄があるといわれ、体重50kgの人の場合、1日に750mlほどの水分が体外に出ていくことになります。空気が乾燥している冬は、体内から水分が奪われやすくなり、不感蒸泄が進みます。暖房を使った室内では、屋外以上に湿度が低くなる傾向があり、いっそう水分が失われやすくなります。さらに、冬は夏よりものどの渇きを感じにくく、水分の補給を怠りがちです。そのため、冬は“かくれ脱水”になりやすいといわれています。
特に高齢者の場合、もともと体内に水分が少ないうえ、感覚が鈍くなってのどの渇きを感じにくくなっているため、かくれ脱水への注意がより必要です。
冬であっても意識的に水分を補給するようにしましょう。
嘔吐や下痢が続いたら水分と電解質を補給
この時期に増える病気が、風邪やインフルエンザ、ノロウイルスなどの感染症です。こうした病気にかかると、発熱や嘔吐、下痢などの症状が現れます。これらの症状が続くと体から大量の水分とナトリウムなどの電解質が失われ、かくれ脱水から一歩進んだ脱水症になってしまいます。
高齢者はもちろんのこと、子どもも注意が必要です。子どもは新陳代謝が活発で不感蒸泄が多く、水分量を調節する機能も未発達なため、脱水を起こしやすいのです。胃腸も弱く、発熱すると嘔吐や下痢症状が現れやすいのも子どもの特徴です。子どもの体は、大人よりも水分不足を招きやすいことを認識しておきましょう。
発熱や嘔吐、下痢を起こしたときは、水分だけでなく、電解質の補給も必要です。風邪やインフルエンザなどが流行るこの時期は、水分や電解質を速やかに吸収・補給できる経口補水液を常備しておくと安心です。経口補水液は、水1Lに食塩2〜3g(小さじ1/2〜1/3杯)、砂糖40g(大さじ4と1/2杯)で手作りすることもできます。
かくれ脱水を予防して脳梗塞や心筋梗塞を予防
体内の水分が少なくなると、血液の濃度が増して血の塊ができやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞の引き金となります。こうした病気を起こさないためにも、冬場でも水分をしっかり補給しましょう。
かくれ脱水や脱水症についてわからないことがあるときは、薬剤師に気軽におたずねください。
イラストレーション:堺直子
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